日本企業のM&Aが過去最多 2021年上半期

吉富 優子

監修

吉富優子

M&A専門月刊誌「MARR(マール)」編集長

広報室だより
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

⽬次

[非表示]

M&Aの件数が過去最多のペースで進捗しています。レコフM&Aデータベースによると、2021年上半期(2021年1~6月)に公表された日本企業が関連するM&A件数が2,128件となり、新型コロナウイルスが感染拡大する前年の2019年上半期(2,087件)を上回り、上半期ベースでは過去最多を記録しました。M&A専門誌「MARR(マール)」の吉富優子編集長=レコフデータ代表取締役社長=は「政府が旗振り役を務める成長戦略や事業再編の政策とリンクして、M&A市場は活性化しており、件数は年間を通して過去最多を更新するだろう」と話します。2019年に初めて過去最多の4,000件を突破した4,088件を上回るペースとなっています。

M&A市場を牽引する5つの要因

M&Aの件数はコロナ禍で2020年こそ減少しましたが、2019年まで8年連続で増加するなどM&A市場は活発な動きが続いています。吉富編集長は?国内の業界再編?中小企業の事業承継?ベンチャー・スタートアップ企業への出資?投資ファンドによる買収?海外M&Aを挙げ、「5つのドライバーが市場を牽引している」と解説します。 2021年上半期の月別では、1月を除く月で前年同月比を上回る結果となりました。特に今年3月は467件のM&Aとなり、従前の月別で過去最多件数だった2019年4月の419件を大きく更新しました。その他にも今年4月が422件(前年同月比41%増)で、コロナ禍においても経済活動の再開を強く印象付ける数字となりました。

クロスボーダーが2割を占める

マーケット別では、2,128件のうち国内企業同士のM&A(IN―IN)が8割近くを占める一方で、全体の数こそ少ないものの、外国企業がからむクロスボーダーのM&Aも増加しています。外国企業が日本企業を買収するOUT―INは153件(前年同月97件、全体の7%)で56件増加。対して日本企業が海外企業を買収するIN-OUTも323件(同307件、全体の15%)あり、全体の2割程度まで伸びています。吉富編集長は「大手企業の事業ポートフォリオ組み換えによる事業の売買先として海外企業や外資系ファンドが増えている」と分析します。売買の金額面でトップとなった日立の米ITグローバルロジックの買収や、日立金属の米投資ファンドへのTOBによる売却など海外案件が上位を占めるトレンドとなりました。

活況が続くM&A市場

M&A増加の背景にある5つの要因に加えて、DX化やカーボンニュートラルなど潮流の変化とコーポレートガバナンス強化を求める東証の市場再編、新しい成長戦略と事業再編を支援する国の政策もM&Aを加速させる環境をつくり出しています。今年7月の1か月間にも計345件のM&Aがあり、すでに3,000件に届く勢いを見せています。吉富編集長は「足元では、M&Aを活用した中小企業の事業承継支援も待ったなしの状況にあり、引き続きM&A市場の活況は続くだろう」と展望します。新聞紙面やテレビ画面で「M&A」という文字が躍る日数は今後も増えそうです。 出典元:レコフM&Aデータベース。

出典:レコフM&Aデータベース

監修

吉富 優子

吉富よしとみ 優子ゆうこ

M&A専門月刊誌「MARR(マール)」編集長

株式会社レコフデータ代表取締役社長。M&A専門月刊誌「MARR(マール)」編集長。内閣府M&A研究会が創設した「M&Aフォーラム」事務局事業を引き継ぎ、M&A人材の育成を目的とする「M&A人材育成塾」、優れた著作、研究論文を表彰する「M&Aフォーラム賞」などを運営。

この記事に関連するタグ

「M&A・クロスボーダーM&A・中小企業・事業承継・成長戦略・業界再編・海外M&A・経営者・M&Aの歴史と将来」に関連するコラム

事業承継・引継ぎ補助金とは?中小企業庁が解説!

広報室だより
事業承継・引継ぎ補助金とは?中小企業庁が解説!

本記事では、事業承継・引継ぎ補助金の概要と、本補助金の制度運用を担う、中小企業庁財務課の高橋正樹課長補佐による解説(※)、最新の公募概要をご紹介します。※本記事は2021年6月30日に公開された内容を編集しています。役職等は取材当時の内容です。事業承継・引継ぎ補助金とは事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継や事業再編、事業統合を促進し、日本経済の活性化を図ることを目的とした補助金です。具体的には、事業

業種特化セミナーがスタート

広報室だより
業種特化セミナーがスタート

日本M&Aセンター業種特化事業部によるオンラインセミナー「全17コマ9月横断業種特化セミナー」が2021年9月10日から始まりました。高い専門性を駆使してM&Aを成功に導くコンサルタントがIT、物流、調剤、建設、食品、製造の業種別に最新M&A事例や成長戦略を解説します。(※当セミナーは終了しました)IT業界M&Aからスタート「売上20億円以上の受託開発ソフトウェア業におけるM&A戦略」をテーマに、

中小企業庁が中小M&A推進計画を初策定

M&A全般
中小企業庁が中小M&A推進計画を初策定

経営者の高齢化と新型コロナウイルス感染症の感染拡大による経済的な影響を受ける中小企業の貴重な経営資源を守ろうと、中小企業庁は4月28日に「中小M&A推進計画」を初めて策定しました。組織強化のために改組した行政機関の「事業承継・引継ぎ支援センター」と、民間のM&A支援機関(専門仲介業者等)の官民が連携して、中小企業における事業承継の支援強化を打ち出しました。今後、5年の期間に官民が取り組む計画をまと

大好評オンラインセミナー 買収の参観日

広報室だより
大好評オンラインセミナー 買収の参観日

日本M&Aセンターのオンラインセミナー「買収の参観日―M&Aの実現と成功のために―」(計3回)が5月より始まりました。M&Aで買い手候補となる経営者を対象にした初めてのセミナーです。毎回、配信が平日の夕方にも関わらず数百人以上が視聴し、まだ2回の配信ながら、すでに人気のコンテンツに成長しています。※当セミナーは終了しました。買い手企業の経営者指南M&Aを検討しながら契約に至る企業と、躊躇して一歩を

著者インタビュー!『社長の決断から始まる 企業の最高戦略M&A』

広報室だより
著者インタビュー!『社長の決断から始まる 企業の最高戦略M&A』

日本M&Aセンターは、書籍『社長の決断から始まる企業の最高戦略M&A』を東洋経済新報社より発売しました。著者の柴田彰さんに、発刊の経緯と本書に込めた想いを聞きました。M&Aしかないとわかっていても、踏み出せない理由――本書は、経営者が押さえておくべき経営戦略の一つとして、M&Aの特に「譲渡」に特化した書籍です。なぜこのテーマで本を出そうと思われたのですか。日本には二つの大きな課題があります。一つ目

インドネシアで人気のお菓子“TRICKS”がM&Aで日本に上陸(記者発表会見レポート)

広報室だより
インドネシアで人気のお菓子“TRICKS”がM&Aで日本に上陸(記者発表会見レポート)

焼き菓子や珍味類の製造販売を行う銀の汐や、高級米菓の製造販売を行う三州製菓などをグループに持つミクシオホールディングス株式会社(本社:広島県呉市)が、インドネシアの上場会社で多くのヒット製品を持つ菓子メーカー「TAYSBAKERS」との資本業務提携を締結し、「TAYSBAKERS」の主力商品である“TRICKS”の日本独占輸入販売権を取得しました。2023年10月24日(火)に、両社が日本M&Aセ

「M&A・クロスボーダーM&A・中小企業・事業承継・成長戦略・業界再編・海外M&A・経営者・M&Aの歴史と将来」に関連する学ぶコンテンツ

業界別M&Aの特徴・動向

業界別M&Aの特徴・動向

近年、あらゆる業界・業種で行われているM&A。業界再編が活発化する業界など、業界・業種によってM&Aの検討ポイントは異なります。本記事では主な業界の現状動向についてご紹介します。※本記事は2021年9月28日に公開された内容を編集しています。この記事のポイントM&Aの動向は業界によって異なり、医薬品卸・小売業界では調剤薬局のM&Aが活発で、業界再編が進んでいる。IT業界ではデジタルトランスフォーメ

日本のM&Aの歴史

日本のM&Aの歴史

日本のM&A件数は年々増加しており、2019年に4,000件を超えて過去最高の水準となりました。今、なぜM&Aはこれほど増えているのでしょうか。また、今後M&Aはどのようになっていくのでしょうか。本記事ではM&Aの歴史をひもときながら、現状のM&A市場の理解、また将来のM&A市場についてお伝えしていきます。※本記事は2021年9月28日に公開された内容を編集しています。この記事のポイントM&Aの歴

M&Aの事前準備。売り手が押さえておくべきポイント

M&Aの事前準備。売り手が押さえておくべきポイント

自社の売却を考える譲渡オーナーの多くにとってM&Aは未知の体験であり、不安はつきません。本記事では、相手探しを始める前に何を準備しておけばいいのか?どのような状態にしておけばいいのか?売り手が押さえておきたいM&Aの事前準備として資料収集・株式の集約についてご紹介します。この記事のポイントM&Aの事前準備として、売り手は企業価値評価や資料収集が必要で、特に決算書類や財務関連資料が重要である。M&A

M&Aのトップ面談

M&Aのトップ面談

M&Aのトップ面談とは?M&Aのトップ面談は、売り手、買い手両者の経営者同士が顔を合わせ、書類だけでは見えてこない相手の価値観、企業文化、M&Aに対する想いを把握し、相互理解を深める場として重要なプロセスです。トップ面談を通じて理解を深め、疑問を解消することで、「M&Aに向けて交渉を進めるか」両者が最終決断するための重要な材料の1つになります。売り手にとっては「相手が自社のどこに興味を持ち、魅力に

「M&A・クロスボーダーM&A・中小企業・事業承継・成長戦略・業界再編・海外M&A・経営者・M&Aの歴史と将来」に関連するM&Aニュース

韓国KRAFTON、ゲーム開発会社Tango Gameworksを事業継承

株式会社KRAFTON(韓国、以下クラフトン)は、2024年8月12日、TangoGameworks(以下、タンゴゲームワークス)を買収、事業継承したと発表した。クラフトンは、韓国の大手ゲーム会社。PC版、PS4版、Xbox版、MOBILE版と様々なプラットフォームを通じてゲームサービスを展開している。タンゴゲームワークスは、日本のゲームソフト開発スタジオ。代表作は、リズムアクションゲームの『Hi

伊藤忠丸紅鉄鋼、米国現地法人を通じ米Worthington Specialty Processing社所有のジャクソン工場を買収

伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社(東京都中央区)は、米国現地法人であるMarubeni-ItochuSteelAmerica,Inc.(米国ミシガン州ジャクソン、以下MISA)を通じ、WorthingtonSpecialtyProcessing社のジャクソン工場(米国ミシガン州ジャクソン)の買収を2022年11月1日(米国時間)に完了した。また、MISAは新会社「MISASpecialtyProcessin

ルノー、電気自動車(EV)のバッテリーの設計と製造において2社と提携

RenaultGroup(フランス、ルノー)は、電気自動車のバッテリーの設計と製造において、フランスのVerkor(フランス、ヴェルコール)とEnvisionAESC(神奈川県座間市、エンビジョンAESCグループ)の2社と提携を行うことを発表した。ルノーは、125の国々で、乗用、商用モデルや様々な仕様の自動車モデルを展開している。ヴェルコールは、上昇するEVと定置型電力貯蔵の需要に対応するため、南

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース